今回は『アイ'ム ホーム』のストーリー毎に私の感想と注目ポイントを紹介したいと思います。ストーリーの分け方は私の分類によりますので、もしかすると皆さんとイメージと違うかもしれません。
本記事ではネタバレを含みます。
各ストーリー感想
過去囚われ編 上・下巻(1〜15話)
主人公(家路)は、事故による一酸化炭素中毒によって、5年分の記憶が失われたという設定ですが、本当に事故なんですかね。部屋の中で、七輪を使って餅を焼きますか?実は、家路は自殺しようとしていたのではないしょうか。
と考えたんですが、それはなさそうです。ページをめくればめくるほど、家路のエゴイスティックさが目につきます。自信満々で身内すら道具にしか思わない者が、自殺を思いつくわけがありません。むしろ、彼の周囲が苦しんでいたでしょう。
過去を知れば知るほど性格が悪い嫌な奴です。仕事ができる風に描かれていますが、人の良心に付け込んだ仕事のやり方は「できる」「できない」以前の問題です。仕事でしか威張ることができない典型的な社畜です。ここからもわかるように、実は記憶を失う前の家路は、哀れむべく存在なのです。
記憶を取り戻す過程で、人から聞かされる自分のエグさに家路自身も引いています。しかし、彼はそれを甘んじて受けなければなりません。自分が強者の時は散々人をいじめ倒したにも関わらず、自分が弱者になった時は、自分の境遇に同情するのはおかしいです。
雨の中、置いてきぼりにされるヨシオ。過去に囚われる家事は、今の妻も、その間に生まれたヨシオにも興味がありません。これ、記憶を失う前の家事が前妻にやっていたことと同じです。やはり、記憶が失われても行動は変わりません。
人は忘れてしまった過去の行為で罰せられるべきでしょうか?私の答えは、Noです。記憶にない罪で人を罰してはいけません。だからこそ、その罪を思い出させた上で罰するべきです。家路の周囲の人たちも、同様の考えなのかもしれませんね。でなければ、周囲の人たちは甘すぎます。利用される側の人間に属します。
未来開拓編 下巻(16〜17話)
最後、家路はいい奴で終わっていますが、バッドエンドですよ!
なぜなら、家路は必ず失われた5年間を取り戻すからです。彼は一時的に記憶が失われているだけで、時間の経過とともに記憶喪失前の家路に戻るでしょう。人のパーソナリティは簡単には変わりません。上記に書いた通り、家路の行動は変わっていません。再び、暴君としての家路が現れ、周囲を不幸にします。
今の妻も、家路の友人から勢いのある家路に乗り移った女です。今の妻にとって、家路が最も頼れる者なのです。だからこそ、家路が一酸化炭素中毒になった時には、誰よりも彼の復活を祈り、記憶を失い一般的な家庭生活を送れなくとも、彼を捨てることができません。彼を捨てると彼女には何も残らなくなってしまうから。
前妻との子供であるスバルには優しかった。自分の子供は、家路にとって自分の分身だったのかもしれません。幼い頃の子供は親の言うことを聞きますが、思春期になると反抗します。その時、家路は子供を隷属するでしょう。なぜなら、彼にとっての子供は、自分が望むように成長すべく分身だからです。
火事で本当に自分が大切なものがわかった、帰る場所がわかった。そんな綺麗事で終わっているところにヘドが出る作品です。
最後に
ストーリーの分解が2つであり、かつ、「過去囚われ編」が全体のほとんどを占めることからも、本作品の冗長さが伺えます。私自身の記憶が5年分失われたら、家路と同じように過去に執着するでしょう。
しかし、これは漫画です。そこまで、しつこく過去に執着している場面を描く必要が本当にあったのでしょうか。先の話の伏線にもなっていないので、単に「読んだ」という感想しか残りません。
総合評価3点の作品をここまで酷評することはなかなかありません。ただ、酷評しているのは、尺を短くし、過去への執着箇所をコンパクトにまとめれば、もっと良い作品になったと思うからです。仮面の設定が面白いだけに、残念な作品でした。
総合評価1点や2点の作品は、そういう要素がないので、さら〜っと感想も終わるんでしょう(笑)。
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ネタバレなし評価