今回は『この世界の片隅に』のストーリー毎に私の感想と注目ポイントを紹介したいと思います。ストーリーの分け方は私の分類によりますので、もしかすると皆さんとイメージと違うかもしれません。
本記事ではネタバレを含みます。
各ストーリー感想
幼少期編 上巻
すずちゃん(主人公)可愛い!途中からはポンコツキャラ扱いを受けますが、しっかりものですよ。人攫いに連れて行かれた時の機転は抜群でしょう。終始一貫しているのは、人の痛みがわかる人だということです。
人攫いで、後に夫になる周作に出会うという設定も、胸キュンポイントです!周作が、すずちゃんとの出会いを覚えており、それですずちゃんを探したという話も素敵です。人攫いにキャラメルをあげる周作も、人の痛みがわかる人でした。
水原哲は不器用な少年です。まぁ、10歳前後の少年なら異性への接し方はあんな風になりますよね。出会ってた時期や時代が違えば、結論も変わったのでしょう。哲が、すずちゃんを「普通」と言ったのは、ずばりすずちゃんの本質を見抜いています。戦時中だからと言って特別ではなく、その時代に生きた人にはそれが「普通」なんだ、と。だからこそ、すずちゃんを主人公に「戦争中の日常」を描けたのでしょう。
兄のことを「鬼いちゃん」と表現するのはツボにハマりました。
嫁ぎ編 上・中巻
ケイ子さん(お義姉さん)は嫌味を言い、家庭の業務を代わりにやり、すずちゃんの居場所を無くしてやろうとしています・・・。ただ、すずちゃんをはじめ北条家(周作の家族)は、ポジティブ思考なのでケイ子さんの「広島に帰れば」を好意的に解釈しましたね(笑)。追い出しが、単なる休暇になりました。
ケイ子さんは、嫁ぎ先で相手の親とうまく行かず、夫と離縁します。ケイ子さんは、東京の野菜を紹介するなど流行の先を進んでいる人で、夫も時計屋さんでした。自分はこんな場所にいる人間ではないというプライドが垣間見れると同時に、一方で、呉の実家を自分の安全地帯と見なしているのが読み解けます。
もやもや編 中巻
周作と白木リンの関係を知り、すずちゃんはもやもやしています。第19回の終わりに「代用品ことを考えすぎて疲れただけ」とあります。ここは炭団の代用品のことを言っていると同時に、自分自身が白木リンの代用品ではないか、という意図が込められています。周作は白木リンを買ったことはあるっぽいんですが、明確にはわかりませんね〜。
第21回で、今度は周作がすずちゃんと哲の関係にもやもやします。哲は、久しぶりにすずちゃんに会えて、とても嬉しそうです。北条家は引いてますが、時代を考えると仕方ないでしょう。だって、もう二度と会えない可能性が十分にあるんですから。周作は気を遣って、哲とすずちゃんを二人にします。が、すずちゃんは偉い!哲の気持ちはわからなくないですが、その誘いをきっぱり断ったすずちゃんは偉い!。周作、まさか寝取られ属性なのか?!と邪推してしまう展開でした。
空襲編 中・下巻
鬼いちゃんは、石でした。生きているか死んでいるかはわかりませんが、遺骨の代わりに石が送られてきました。鬼いちゃんは、後から亡くなったとわかるのですが、どの時期かは明瞭でありません。
空襲で、春美ちゃんが死にました。同時に、すずちゃんは右肘から先を失いました。第38回で、行き倒れになった兵隊が、実は自分の息子だったと後から知る展開は胸に刺さるものがあります。ここで初めて、読者は戦争の悲劇に直に触れます。それまでは、楽しくほのぼの読んでいた作品が、戦争を伝え出します。最初から戦争を全面に出していれば、本作品を避けた人も多かったでしょう。ここにきて、否が応でも戦争について考えるきっかけを産んでいます。
戦後編 下巻
ハッピーエンドと言っていいでしょう。北条家は相対的に見れば幸せです。家もあり、家族もおり、生活ができている。すずちゃんにとって、今でも兄は最強の「鬼いちゃん」のままです。ワニと新婚生活を送っている夢?は面白いですね。
「この世界の片隅に うちを見つけてくれてありがとう 周作さん」
人攫いもまだまだ現役ですが、本作品の締めは上記のすずちゃんの発言です!
最後に
結構大人向けの漫画です。何気ない描写が、実は意味を持っていたりします。この漫画の面白さを感じるには、当時の知識が必要になってきます。私自身もまだまだ隠れた意図を読み落としていると思いますが。
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ネタバレなし評価
5点中4点とそこそこオススメの漫画です。
読みやすい戦争をテーマにした作品です。
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