今回は『心が叫びたがってるんだ。』のストーリー毎に私の感想と注目ポイントを紹介したいと思います。ストーリーの分け方は私の分類によりますので、もしかすると皆さんとイメージと違うかもしれません。
本記事ではネタバレを含みます。
各ストーリー感想
キャラクター紹介編 1巻
1巻のほとんどのページを使い、4人の性格が丁寧に描写されています。
坂上拓実
両親が喧嘩する中でカップラーメンを食べ、「ご飯がうまい!」と表現します。これ以外にも、何事も気にしていない描写があります。ほとんどは本当に気にしていないんでしょうが、二藤の発言は気にしていました。
二藤葉月
ピアノを弾く坂上を想像しながら、母親と話しながら食べるご飯を「ご飯がおいしい!」と表現します。ここから坂上と二藤では、物事に対する捉え方の違いが出ています。坂上は食べ物そのものから、二藤は気持ちという感情から美味しいと感じていますね。
話の終わりにある「あのときの言葉が自分に突き刺さったままなのだ・・・」の「あのときの言葉」は何でしょうかね。流れで考えると「違うよ!!!」ですが、それだと意味をなしません。私の考えでは、坂上の「気にしてないよ。」です。本当に気にしていないと感じてしまったから、自分自身の存在の軽さを強烈に意識させられたのではないでしょうか。支えたい気持ちがあるのに、それを表現できず誤解を与えてしまった。それゆえ、自分が軽く扱われている。そのような無意思的な悲しみがあるのでしょう。
田崎大樹
野球がうまいが故障をしてしまったピッチャー。熱い男!
成瀬順
ここは両親が人間的に出来ていないかわいそうな家庭。離婚の原因を、娘に話されたためと切れる父。そのような現実をもう受けたくないから、娘に二度と話すなと切れる母。そして、両親の離婚の原因を自分だと思ってしまい、その罪を軽くするために自分を罰する順。
地域交流会編 1〜2巻
先生のあみだくじにより地域交流会の実行員が決まりました。先生、ナイスです。成瀬はミュージカルであれば声を出せると気づきます。これはきっと、自分ではなく誰かに成りかわることで、罰の対象である自分を意識しないからでしょう。歌っている気持ちは自分のものですが、それを別の者が代わりに言っているイメージです。
成瀬は主人公に惚れます。そりゃそうですよね〜。今まで自分のことを誰も見てくれなかったのに、暖かく自分を見てくれる。話せない自分を受け止めてくれる。優しくされたら、恋と誤認するでしょう。
ミュージカル練習編 2〜3巻
成瀬が病院に運ばれたことを期に、成瀬と田崎は1つ成長します。が、二藤は、自分の思いを伝えられない。
「王子の悲しみ」の「王子」は何を意味するのか?最初読んだ時は分からなかったのですが、王子は「坂上」でしょう。1巻で出て行くる無記名の王子が、成瀬の中で坂上が王子になっています。
成瀬逃亡編 3巻
成瀬にとっては坂上は王子だが、王子にとって成瀬は姫ではなかった。
話せないと困る、と成瀬自身が言ったことが驚きでした。自分で分かっていたのですね。成瀬がいろいろ話すことで、坂上も泣きます。成瀬によって坂上も、自分が本音を隠してきていたことに気づいたのでしょう。
本音を言わないために話すことをやめた成瀬、本音を言わないために無関心になった坂上。2人は同じでした。だからこそ、成瀬は坂上に惹かれ、坂上は成瀬を支援したくなったのでしょう。
ミュージカルエンディング編 3巻
きれいに終わります。成瀬母が自分の過ちに気づきました。自分の昔の発言を忘れ、娘に接していた母。ミュージカルを通して、自分の思いが誤認されていたと分かりました。ミュージカル出演者以外でミュージカルの影響を受けた一番受けたのは成瀬母でしょう。この作品は、成瀬家救済の物語でもあります。
田崎、応援している!
最後に
青春ものの漫画を読んでいると、「このような体験をしたかった」と思う時があります。本作品は、そう思いませんでした。本作品が日常的で、かつ、良いことだけでなく悲しい過去があるからでしょう。その悲しい過去はあくまで日常なのです。だから、悲劇の主人公として自分をブランド化するには弱い。が、読んでいる者からするとちょうどよい刺激になっている。そんな感じです。
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ネタバレなし評価
5点中4点となかなかオススメの作品です。
尖りすぎてないので周囲の人にもオススメしやすい漫画ですよ!
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