今回は『さめない街の喫茶店』のストーリー毎に私の感想と注目ポイントを紹介したいと思います。ストーリーの分け方は私の分類によりますので、もしかすると皆さんとイメージと違うかもしれません。
本記事ではネタバレを含みます。
各ストーリー感想
さめない街編 1巻(1~19話)
冒頭1頁の3コメでは、現実世界のスズメ(主人公)が描かれています。
スマホの時刻は、4:31で、曜日は、水曜日です。カーテンから光が差し込んでいるので、午後4:31でしょう。スマホ画面に日本語がなければ、白夜の可能性もありましたが。スズメは、日本人で、部屋の内装からも眠っている場所は日本と考えられます。
スマホ画面を英語にして、内装を北欧的にしたほうが、よりお洒落度は上がっていたように思えます。それなら、「夢から覚めない」という設定が、白夜による睡眠障害と連想できましたのに。
夢の世界が現実なのか、現実の世界が夢なのか、これは、荘子の『胡蝶の夢』を喚起します。もしかすると、主人公のいる世界こそが、私たちが存在する真の世界なのかしれませんね。と考えると、SFになり、本作品のイメージが壊れてしまいますので、深くは考察しません。
1話で「さめない」に点々をふり、協調していることから、「覚めない」だけでなく、「冷めない」を暗示しているのでしょう。一方、「醒めない」は含んでいないと考えられます。タイトルの「さめない」を平仮名にしているのは、読者に「さめない」の意味を考えさせるためでしょう。
「覚めない」は、夢から覚めないだけでなく、迷いから覚めない状態を意味すると考えられます。「このままここにいてもいいか」と思う限り、現実世界に戻ることはないです。単に「夢から覚めない」のではなく、スズメの迷いを表すタイトルにもなっているのです。
「冷めない」は、ハクロさんのコーヒーが冷めない、ルティアでの生活に興味が冷めないと考えられます。コーヒーの冷めないはわかりやすいですね。一方、興味が冷めないは、「冷めない」の意味を理解していないとたどり着けないでしょう。新しい人との出会い、新しいお菓子つくり、それらがある限り、スズメはこの生活に興味を持ち続けます。
「醒めない」の場合、酔いから醒めないを意味します。お酒の描写では、スズメが二日酔いになる場面が描かれていますが、そのあと、日常に戻るので、酔いからは醒めます。
タイトルの「さめない」は、ルティアでの生活が興味深いために、現実世界に戻ることをためらうスズメの心情を表しています。だから、「さめない街」なのです。
さめかけた街編 1巻(20話)
20話では、謎が深まります。
スズメの幼少期がこれまで以上に詳しく描かれています。ルティアは、幼少期にスズメと妹(ひな)が描いた、二人のための「ひみつきち」とわかります。そして、そこには、父と母も描かれており、ハクロさんは父、メンタさんは母を表しているわかります。
ルティアでは、スズメは、父であるハクロさんと住んでいますが、母であるメンタさんはお客さんとしてお店に来るに留まります。つまり、父のほうがスズメとの関係が近いです。
ハクロさんの「もう 何も 心配なんていらないのに」という発言、「何度でもコーヒーを淹れよう この夢がさめてしまわないように」という思いから、ハクロさん自身が意思を持って、スズメをルティアに閉じ込めようとしていると考えられます。
もしかすると、父は亡くなっているのかもしれませんね。心配のない「夢」の世界で、娘を守り続けているのかもしれません。
最後に
本作品は、ストーリーを楽しむ作品ではなく、本棚に置いてお洒落を演出する漫画です。最後の最後で、謎が深まる展開になりますが、最後の2ページはなくてもよかったでしょう。
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