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[バレあり]寿命を買い取ってもらった。一年につき、一万円で。_感想018[4点]

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今回は『寿命を買い取ってもらった。一年につき、一万円で。』のストーリー毎に私の感想と注目ポイントを紹介したいと思います。ストーリーの分け方は私の分類によりますので、もしかすると皆さんとイメージと違うかもしれません。

本記事ではネタバレを含みます。

寿命を買い取ってもらった。一年につき、一万円で。 1 (ジャンプコミックスDIGITAL)

寿命を買い取ってもらった。一年につき、一万円で。 1 (ジャンプコミックスDIGITAL)

  • 作者: 三秋縋(メディアワークス文庫「三日間の幸福」),田口囁一,E9L・田口囁一
  • 出版社/メーカー: 集英社
  • 発売日: 2017/07/04
  • メディア: Kindle版
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各ストーリー感想

寿命売却編 1巻(1〜2話)

主人公、嫌なやつですね〜。本作品では、最後いいやつになっていますが、こんなことは稀なんでしょう。しかし、序盤に出てくる本屋の店主、レコード店の店員もクセがありますね。読み流してしまえばそれまでですが、彼らは寿命売買の仲介者でしょう。買取を行う店で表面上働いているのは、着眼点がいいですね。だって、お金に困った人に会いやすい、つまり、見込み客に会いやすい場所ですから。彼らも、主人公に役立つ話をしているようで、結局は寿命売却の鴨扱いとして見ていたのでしょう。

 

買取価格は、幸福度、実現度、貢献度から査定されるようです。1年1万円が最低買取価格ならば、赤ちゃんを産んで、あるいは養子をとって、その子の寿命を売るという究極の闇ビジネスが生まるでしょう。実際には、1年1万円という最低買取価格はミヤギの嘘でした。主人公の30年で30円は妥当です。お金が得られるという意味ではなく、これからの嫌なことをスキップできると考えればの話です。

 

クスノキみたいな者に限って、自分の人生に意味があると思っています。「自分の寿命を1年減らしていいから、XXXを破滅してほしい」というような願望は、頭が痛くなるほどに傲慢です。なぜなら、あなたの人生にXXXの何十倍もの価値があると思っているゆえの発言だからです。

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過去回帰編 1巻(3〜6話)

監視役が実はヒメノだったという安易なオチではなりませんでした(笑)。

 

クスノキはこれまでの人生から少しでも有意義な3ヶ月を実現しようと奮闘しています。が、これまでの人生で他人を蔑ろにしてきたため、周りには誰もいませんでした。その結果、タイムカプセルを掘り起こして、仲が良かった当時のヒメノなら自分のことを好いてくれているだろうという残念な思いに駆り立てられ、タイムカプセル荒らしを行っています。

 

1巻の後半は、主人公が惨めに感じるのと同時に、それがスカッとする感じもしました。これは、著者が読み手の勧善懲悪感に訴えかける描き方をしているからでしょう。誰しもが、どこかクスノキのような人物は惨めな境遇に陥ればいいのだ、という気持ちがあるのでしょう。

 

ヒメノ編 2巻(7〜9話)

ヒメノも狂っていました。「私の助けの求めに応じなかった」と手紙にありますが、それは酷な話です。だって、ヒメノの手紙はSOSの手紙ではなったですもの。ヒメノもクスノキと同類だとこの話からわかりますね。自分の思っていることは、きちんと言葉にしなくても伝わる、という傲慢。未来が変わっても、彼女はどこかで自殺するでしょう。ヒメノにとって世界は生き辛すぎます。そして、復讐の対象がいなくなったことで、余計に生きられない世界になりました

 

クスノキが寿命を売る前の世界では、22歳での飛び降り自殺はクスノキの目の前で行われいたんですね。クスノキが大学4年生の頃でしょうか。それによって、クスノキは、「最も軽蔑していた職」につくことになったのでしょうか。いや、職は関係ないでしょう。それよりも、クスノキにはそれほどの衝撃はなかったのでしょうね。なぜなら、ミヤギの話によると、クスノキが不幸になる転換点は30歳後半のバイク事故だからです。あえて話さなかったとのことですが、ヒメノの飛び降り自体は重要なイベントかもしれませんが、その影響力はほぼなかったのです。

 

クスノキとミヤギのデートはお互いに楽しそうですね。これが、2巻10話から明るい物語になる序章です。

 

未来志向編 2〜3巻(10〜13話)

この作品が面白いのはここからです!こだわっていた過去と決別したからこそ、未来に向けるんですね。クスノキは、ひらきなおってミヤギとデートを始めています。

 

では、監査役がミヤギでなければどうなっていたのでしょう。このような明るい展開はなかったでしょうね。なぜなら、ミヤギが可愛らしい同世代の女の子だからこそ、生きる気力になっているからです。男性はちょろいです(笑)

 

ミヤギがクスノキのために30万円を使った理由は、本作品でも明確には描かれていません。ただ、どうやってその30万円を用意したのか。レジの中のお金を使ったのでしょう。それは、業務上横領という犯罪になるので、発覚したら捕まります。しかし、対外的には見えない存在なので、捕まることなく、寿命の売却という形で済むのでしょうか。

 

価値とは?編 3巻(14〜15話)

人の価値とは何か。何のために生きるのか。長生きすることが目的ではなく、人生で何を実現するのかが大切だ、が本作品のテーマでしょうか。

 

パントマイマーとして名声を高めていくんだろうと読み進めたので、それが画家に変わった時は意外でした。パントマイマーの話が出ているので、その既定路線かと思ったのですがね。絵でそのような巨匠になる話はなかったんです。もしかすると、ミヤギとの時間で感覚が研ぎ澄まされたのかもしれません。

 

ここで考えたのが、実は読み手にもミヤギは見えていないのではないかということです。実は、作者はミヤギを今まで一度も描いていない的な。これまでのミヤギは、私たち読み手が、他のモブキャラのように想像しているものにすぎない、と。そう考えると面白いです! 

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ハッピーエンド編 3巻(最終話)

ミヤギのために残りの寿命を売ったクスノキ。そのまま絵に邁進すれば、教科書の片隅に載るレベルのようでした。ここで、クスノキは2つの選択が提示されました。それは、「教科書の片隅に載るため寿命を売らない」、「ミヤギのために寿命を売る」という2択ではありません。「世界の文化の発展のために残りの人生を費やすか」、それとも「1人の生活を楽にするために残りの人生を費やすか」の2択です。

 

クスノキの選択は、世界知の進歩を遅める行為です。私が言いたいのは、その選択が浅はかであった、というものではなく、世界よりもミヤギが大切である姿勢を見た、というものです。個人は文化よりも重いのです。

 

見えるようになったミヤギは、私の思っていたミヤギとそれほど変わりませんでした!これが、クスノキの演技力なのか!という彼らの世界にはまった感想の書き方です。パントマイマーという設定なら、こんな感想で終わるのも面白かったとは思うんです。

 

最後に

物語の方向転換がうまくはまり、3巻という尺でみごとに着地しています。もともとが小説だったからでしょうが、小説を漫画にするのは結構難しいのです。小説原作の漫画を読んできましたが、本作品は成功した部類になります。ま、本作品は原作を読んでないので、もしかすると原作ファンには不満かもしれませんが(笑)。

 

原作はこちらです!

三日間の幸福 (メディアワークス文庫)

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  • 作者: 三秋縋(メディアワークス文庫「三日間の幸福」),田口囁一,E9L・田口囁一
  • 出版社/メーカー: 集英社
  • 発売日: 2017/07/04
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