今回は『トモグイ』のストーリー毎に私の感想と注目ポイントを紹介したいと思います。ストーリーの分け方は私の分類によりますので、もしかすると皆さんとイメージと違うかもしれません。
本記事ではネタバレを含みます。
各ストーリー感想
先生いじめ編 1巻(1〜2話)
サプライズ誕生日プレゼントから七海先生いじめが始まります。
プレゼントの中身は、七海先生の教え子(舞)が自殺した日がマークされている手帳でした。妊娠した女生徒に向かって、「ガラクタがガラクタを生んでどうするの!」は相当パンチが効いた発言です。これは誤解だろうと思っていたのですが、七海先生の思想を考慮すると確実に言っています。
七海先生に対するいやがらせは続きます。あえて、いじめをオープンにしているところがいやらしい。犯人として複数の候補を挙げることで、七海先生に生徒を疑わせようとしていますね。そんな中、自殺ごっこにより宮田が死んでしまいます。ハートのM×Mは、宮田(Miyada)と美樹(Miki)です。
途中で、愛理がメダカの共食いの話をしています。食べ物に困ったメダカは共食いをする、と。水槽のメダカが何匹か七海先生に質問し、生徒と同じ31匹という答えに対して、「半分正解で半分不正解」と言います。・・・、1匹減って30匹なら、不正解でしょうに。ここの場面、愛理は切れ者ではなく単なる阿呆という布石ですよ。
仲間割れ編 1〜2巻(3〜6話)
真紀子による、楓狩りが始まります。手を洗うスポンジの中にカミソリを仕込むのは、全校生徒に対する宣戦布告です。基本的に、登場人物たちは頭がよくありません。しかし、なぜか彼らの計画通りに進むのでリアルさもありません。
メダカが1匹しか残らない描写があります。読者は、31人の内生き残るのは1人だけだと思うでしょう。が、けっこう残ります。残念な子です。もしかすると、本事件の5年後の同窓会で、愛理による不手際で蓮の生存者一掃が実現するのかもしれませんが。
楓はあっさりと美樹に殺されます。展開が早い!早すぎる!この辺は、何ら面白くありません。あっさりと真紀子も死にます。思い入れができる前に、登場人物を減らしていくのはどうなんでしょう。
犯人編 2〜4巻(7〜13話)
ドストエフスキーの『罪と罰』を教典に、インコから啓示を受けた者がいます。和義。ダーツの的にされ、犬のような仕打ちを受けていた彼です。
和義がクラスメイトの皆殺しを考えたのは、メダカのようにお腹が空いたからではありません。愛に飢えていたからでしょう。行為を正当化するため、自分は非凡であると位置付ける必要があり、それが『罪と罰』で得られました。
和義はちゃんと『罪と罰』を読んだのでしょうか。主人公のラスコーリニコフは、高利貸しの老婆を殺害した後、後悔で苦しむのに。読んでいたら、『罪と罰』は教典になり得ないはずです。
隼人は、強い者が正義であることを体現しています。プラトンの『ゴルギアス』に登場するカリスレスの「自然の正義」という考えです。強い者が多くを持つことが正しく、弱い者を虐げても良いとする正義観です。
まさに好き勝手やっていますものね!中でも、「童貞喪失同盟」という残酷な遊びは吐き気がします。
清楚に見せかけて避妊をしない系女子の舞が生きていました。舞もえげつないことしますね。彼氏にお金を積んで、七海先生へ復讐するよう脅迫。彼氏は、仲間とともに七海先生を強姦。
愛理のしょうもない知恵により、和義は舞に再会します。そして、和義が暴走しました。愛理、・・・とても残念な子です。
偽善者編 4巻(14〜16話)
和義を導いてたのは、七海先生でした。自分で排除するが手間だから、代わりにさせようという発想。そして、自分の後継者は蓮であり、和義はただの清掃係。
七海先生は、社会のためにゴミ処分をしていると言いますが、結局は自分自身のためです。そもそも七海先生と蓮の正義観は違います。蓮は、社会福祉のため自己犠牲を厭いません。一方、七海先生は、社会福祉のため他者犠牲を求めます。妊娠した教え子に対して、「ガラクタが〜」の発言は、他者が自身の考えで社会をよりよくするよう求めています。そこに七海先生の犠牲はありません。
蓮は後継者になりえません。なっても操り人形です。和義は操り人形にはなれません。なぜなら、彼は蓮とは違い自分で考えて行動できるからです。「裏切り者ゲーム」の裏切り者は七海先生ですもの。
偽善は自己中心性に基づきます。もっともエゴイスティックなのは七海先生ですから、この漫画の偽善者は七海先生を指します。決して、蓮ではありません。
最後、蓮が同窓会でゴミ処分をすると決意しています。愛理には気づかれておらず、むしろ、愛理と蓮は友好的な関係です。愛理、5年経っても何ら変わらず残念なままでした。同窓会では、蓮のゴミ処分が完遂されるでしょう。
最後に
命が軽く扱われすぎており、読者の興味を引くため過激な内容になっています。リアルでありません。そして、黒幕である七海先生の正義の薄さが想像以上に薄く、もう反対側が透けて見えるほどでした。
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