今回は『みわくのあくま』のストーリー毎に私の感想と注目ポイントを紹介したいと思います。ストーリーの分け方は私の分類によりますので、もしかすると皆さんとイメージと違うかもしれません。
本記事ではネタバレを含みます。
各ストーリー感想
魅力編 1巻(1〜3話)
本解釈の結論、著者は有神論的平等主義者。
世志子ちゃん、めちゃめちゃ可愛いですね!いわゆる萌え系の絵とは違うんですが、なんか見ているだけで幸せになれる感じです。著者が生み出した奇跡のキャラクターと言っても過言ではないでしょう。
と、いうのが本作品に合わせた感想です。あくまの力に魅せられました(笑)。あくまの力は生物全体に効力を及ぼしています。その対象範囲から、著者は、LGBTを含んだ人間の平等だけでなく、全生物平等主義をテーマに本作品を描いたのではないか考察します。
哲学者のアリストテレスは「理性がないものは人間ではない」的なことを言っています。彼によると、赤ちゃんや重度知的障害者は人間ではないことになります。逆に、理性的な者であれば、生物学上の人間以外でも人間であると読めます。アリストテレスは理性を持つものを人間として定義しています。
著者は、あくまの魅力の範囲を全生物としています。つまり、人間もそれ以外も全て平等であるという考えが根底にあります。本作品では「きつね様」という人間の上位概念が存在します。あくまに対抗できるのは、神なので、作中では「きつね様=神」になります。
しかし、彼ら(きつね様)も同様に、世志子ちゃんに魅せられます。無神論的全生物平等主義の意図を本作品に込めているのでしょう。表立って神の存在を否定すると、各宗教から非難を受けるので、漫画という印刷物に著者は思いを込めたのだと思われます。
宇宙人も同様に世志子ちゃんに魅せられることから、地球の生物を超えた生物の存在を否定する主張が透けて見えます。以上より、著者は、博愛的科学信奉者と解釈できます。
本作品を通して、読み手(理性がない若者≠人間)に与えたい影響は、人間は他生物に比べ優れているわけではなく、また、神や宇宙人と言った超越的存在も摩耶歌詞に過ぎない、という思想改造です!そう考えると、恐ろしいです!!
きつね様編 1巻(4〜5話)
「きつね様編」と「宇宙人編」はもっと別に書く内容があったでしょう。上記では、狐と宇宙人に意味を持たせ本作品の解釈をしましたが、深読みです。そこからさらに深読みすると、またまたとんでも理論を展開できます。
神として表現されるきつねは、「お狐8人衆」からわかるように単位が「人」なんです。「神=きつね様=人間」という構図になり、無神論の話は否定されます。
と思うところですが、実は、そうではないのです。本作品の最後が、「祓ってみないと」であることから、真の神は別にいることを表しています。そして、ここで作品が終わるからこそ、神という概念は私たち人間には感知できない高貴な存在として、表現されるのです。
ジジちゃん、ババちゃんにあくまの力が効かないのは、彼らが枯れているからです。では、何が枯れているのでしょう?考えられるのは、性欲です。あくまは生物の性欲に働きかける力を持っているのです。性欲という俗物的なものにおいて、人間は他生物と同程度に愚かだと言いたいのでしょう。
安直に性欲と考えではいけません。これまでの流れと、最後の結末から、著者が有神論者だとわかりますので、性欲は欲の例として表現されています。つまり、欲に支配されることを否定しており、「プロテスタンティズムの倫理」を表現していると考えられます。これは、2話の尾金持子の事例から明らかです。

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宇宙人編 1巻(6〜7話)
では、ここで宇宙人は何を意味するのしょうか。宇宙人は、「惑星を支配する」ことを目的としています。そして、世志子ちゃんに魅せられています。
ここから、「地球外生命体(宇宙人)=神」という考えを否定していることがわかります。しかしながら、地球生物のように性欲があり、同程度に愚かな存在としての宇宙人が肯定されています。
本作品でわざわざ宇宙人を登場させたのは、「神=地球外生命体(宇宙人)」と誤認されないようにするためです。2話分の尺を使用してまで、著者は誤認されないよう気をつけたのです。
神も世志子ちゃんに魅了されるのでは?という疑問があるかもしれません。が、私は、そうは思いません。なぜなら、神は、本作品で描かれないからこそ神であるからです。
可愛いは罪編 1巻(8〜9話)
嫌味な性格に感じられますが、実は過去の出来事からあえて生物を遠ざけるようにしているのです。「かわいいは正義」ですが、「度を越したかわいいは罪」でした。世志子ちゃんはそれに気づいているからこそ、ツンツンキャラを演じているんですね!
世志子ちゃんは外見だけでなく、内面も輝いている素敵な人でした!!!という当初の設定で、今回の感想を終わりにしたいと思います。
最後に
今回の感想は、本作品に対する私のとんでも解釈です(笑)。書いていてなかなか楽しかったですよ!願わくは、本作品を読んだ方と、今回みたいな議論をしてみたいです。
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