今回は『暗黒女子』のストーリー毎に私の感想と注目ポイントを紹介したいと思います。ストーリーの分け方は私の分類によりますので、もしかすると皆さんとイメージと違うかもしれません。
本記事ではネタバレを含みます。
各ストーリー感想
二谷美礼編 上巻(2話)
貧乏な家で育った子です。1年生です。
美礼にとって、文芸サークルのサロンは彼女が求めていた場所でした。それは、物語に出てくるような夢のような空間でした。家庭教師のアルバイトでは日給1万円を貰え、いつみの母親からはいろいろと物をプレゼントされました。
いつみは、美礼が無理やり弟の家庭教師になったと言います。が、それは嘘でしょう。サークルメンバー同士を互いに嫌わせる目的と、秘密の共有による特別感の付与の目的があり、そのような嘘をあかねに話したのだと思われます。
いつみは家のものが盗まれていると言います。が、盗んだのであれば、美礼がその髪飾りをつけるのもおかしいです。一部盗んだものもあるかもしれませんが、大部分は本当にプレゼントされたのでしょう。しかし、どれが盗まれたもので、どれがプレゼントされたものか、周囲からはわからないので美礼が全て盗んだように映ります。
これは、いつみの罠です。
小南あかね編 上巻(3話)
お菓子作りの子。2年生。
わびさびが大事であると考えるあかねは、いつみの豪華主義を否定します。しかし、文芸よりもキッチンに興味があり、サークルへの参加を決めました。
マカロンの作成で、あかねが最も他人に任せたくない工程をいつみが行います。ここの場面から、いつみは、自分があかねの上に君臨していることを表現しています。
放火は真実だとしても、なぜそれをいつみが見ていたのか。それが疑問です。いつみにとってのあかねは、それまで目をかける存在ではありませんでした。う〜ん、本当に偶然なのでしょうか。偶然以外の解釈がなければ、ここに深い意味はなさそうです。
ディアナ・デチェヴァ編 上巻(4話)
ブルガリアの留学生。
ディアナは、いつみに惚れており、もらった人形を「いつみ」として愛します。途中で、人形にナイフを刺す場面がありますが、あれは志夜に対する魔女の儀式でしょう。
いつみを呪詛で殺したという園子の話は無理があります。人間の解剖を目の当たりにし、「生きるということは生理的なこと」という結論にたどり着いた人間から出る内容ではありません。園子はオカルトは信じていないが、これが真実であるという言い方にも疑問が湧きます。
エマがツアー中に怪我をしたのは、ディアナが押したからなんですかね。本人は自白しているようですが、疑問が残ります。
古賀園子編 下巻(5話)
医師を目指す3年生。
香水を特別にフランスから取り寄せられたという話に周囲が違和感を覚えなかった点から、彼女の性向と金持ち度がわかります。加えて、闇鍋にシャネルの時計を入れたことからも、誤ったユーモアのセンスがあることがわかります(笑)。
園子は、人間の解剖がしたいために、いつみのお父さんに接近しました。美礼の話では、園子がいつみのお父さんを誘惑している。いつみは本当にそう言ったのでしょうか?言ったとしても、誘惑の意味を美礼は誤認したのでしょう。知的に誘惑しています!
高岡志夜編 下巻(6話)
小説家の子、2年生。ディアナの視点で描かれる志夜とのギャップがすごい!
自分の小説が外国語に訳されるのを嫌う志夜。わざわざ「オリジナルな作風」と言っているところがいいですね。映像化はいいとしても、外国語訳は断って正解でしょう。日本の同世代に向けて書いた文体で、外国語訳してももともとの意味を表現できません。
志夜がフランスの短編小説を参考にしたのは事実でしょうが、盗作とまでは言えないのではないでしょうか。少なくとも、日本の同世代に受けるような作品は単なる翻訳からは生まれないでしょう。
あかねが突き落とすところを見たと証言しています。そこが謎です。考えられるのは、澄川を除く5人で殺害の計画を立て実行し、実際に突き落としたのがあかねだった、ということですね。だからこそ、5人の朗読内容は互いに矛盾するように作られているのだと考えました。つまり、事件の真相は、5人による謀殺である、と私は考えました。
会長ほか編 上・下巻(1話 , 7〜8話)
澄川、そもそも自分で小説作っていないでしょう!あるいは、この代読の小説こそが澄川の作品かもしれません。いつみの字体という話をしていますが、真っ暗の中、それを確認できた人は澄川以外にいませんからね。
5人の秘密は本当でしょう。加えて、澄川がいつみを殺害した動機も本当でしょう。ただ、嘘なのは、代読の小説をいつみが作成したということです。
澄川も何らかの弱みを握られていたのでしょうか。だから、ずっといつみの影にならざるを得なかった。それに慣れすぎていつみの影として違和感なく過ごしてきたが、その太陽であるいつみが俗人的すぎたので影を演じるのが嫌になった。そういう流れも考えられます。
「脇役に徹するということが どれほど屈辱的で鬱屈させられるものか 魂をすり減らすものであるかを知らずに」は澄川の言葉でしょう。なぜなら、いつみのそのような脇役の場面は1度も描かれていませんし、いつみはこれまで主役の人生を歩んできています。
今回の主役である前会長白石いつみの登場シーンは、とても美しいです。実際には、
嫌なやつでしたが!いつみは、各シチュエーションに嘘をついています。側から見ればなんてないことに、嘘を組み合わせることでそれが本当に起こったように見えます。
最後のオチ!偽装死というのがダサいです。実は、飛び降りた段階では生きていました、というのはよろしくない。死んだかどうかは学校に報告が入るでしょう。少なくとも、学校の先生には入るでしょう。たとえ、お父さんが学校の経営者だとしても、生きている者を死んだことには、逆に、死んだ者を生きていることにはできないですから。ここで一気にリアリティがなくなって、残念でした。5人による謀殺のほうがリアルです。
最後に
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